2004/11/17

人間の安全保障:途上国現地での具体化

皆さんこんにちは

 外務省で人間の安全保障ほかを担当している南と申します。先週NYに出張した際このフォーラムのことを聞き、早速加入させていただき、今回初めて投稿させて頂きます。
 外務省や国内での人間の安全保障の普及、ということが私の使命の一つなのですが、ここで悩むのが、「結局人間の安全保障、というテーマによって何がどう変わるのか」という質問に対して私が十分な回答を持ち合わせていない、ということです。わかりやすく言い換えれば、「人間の安全保障というお題目を唱えることによって、世の中がどのように良くなるのか」ということです。日本人はきわめてプラクティカルな人間ですから、やはり具体的な成果がないと納得しないのだと思います。
 人間の安全保障を実現するためのツールの一つとして国連事務局にある人間の安全保障基金というものがありますが、1件100万ドル程度の案件によって世の中が大幅に変わるわけではないでしょう。結局、この基金を使うにせよ、バイの援助、マルチの援助を使うにせよ、コミュニティ作り、村おこし、ということを考えながら援助プログラムを作り、かつその住民のオーナーシップを発揮させながら生活の向上、強化を図っていく、ということなのであると思っています。
 しかし、この実行は簡単ではありません。まずもってプログラム作りに手間がかかるし、現場でのレシピアント側の主体的な協力が十分に得られなければなりません。そもそも国連関係援助機関同士の援助調整も十分になされているとは限らないでしょう。
 このように書いている私ですら、現場のことをよく知っているわけではないので、確信を持てないでいるわけです。緒方JICA理事長によれば、「人間の安全保障とは、グローバルに考え、ローカルに行動すること」ということですが、私の場合はそのローカルな行動をいかにすべきかがわからない、ということです。

 そこで、バングラデシュの紀谷さんにお聞きしたいのですが、バングラデシュではどのようにしたら、人間の安全保障のコンセプトを具体化できるのでしょうか。人間の安全保障の一つの焦点は、ポストコンフリクト状況下でのギャップへの対応、ということなのですが、バングラデシュの場合ポストコンフリクトではないので、通常の貧困状況への対応、ということになるかと思います。一つ考えられるのは、洪水など災害の多いバングラデシュの状況に対応する、災害に強いコミュニティ作りをする、ということが考えられるかと思うのですが、このような援助は既に行われているのではないかとも想像します。どのようなアイディアがありうるのか、是非教えて頂きたいと思います。

外務省国際社会協力部政策課長 南  博

1 Comments:

At 9:52 PM, Blogger Team UN Forum said...

南様、皆様

在バングラデシュ日本大使館の紀谷です。当地での人間の安全保障の取り組みにご関心を持っていただきありがとうございます。

人間の安全保障を途上国現地で具体化するためには、現地のニーズや状況にあわせて、「コミュニティ作り」というアプローチを強化することが大事だと思います。

これまでの援助の中には、「コミュニティ作り」というアプローチを取っているものも、そうでないものも、それぞれたくさんあります。(例えば、保健セクターでは、中央官庁での政策・制度強化のアプローチもありますし、地方のコミュニティ・レベルでどのように各種事業の効果を高めていくかというアプローチもあります。)

その中で、現地のニーズや状況を踏まえた上で、「コミュニティ作り」というアプローチが有効なところについて、その有効性を広く知らしめるとともに、日本としても積極的に関与していくことが、必要なのではないかと思います。

バングラデシュの場合、中央政府の能力が充分でないことから、コミュニティ・レベルでの能力を並行して強化することが重要になっています。その際、NGOとの連携も大事です。

ただし、巨大な国なので、全国津々浦々に展開するには、膨大な予算と人員が必要であり、単一のドナーがなし得るものではありません。そこで、スケールアップ可能なパイロット事業からはじめ、中央政府からの支援やコミュニティ同士の相互学習を通して拡大・発展させていくという段取りが必要になってきます。

いずれにせよ、はじめに「人間の安全保障」ありきというより、まず「如何に開発を効果的に実現するか」を考え、その際に「人間の安全保障」というアプローチが頭の中に入っていると結構応用が効くよ、という話だと思います。そうでないと、開発パートナーシップの中で、先方政府や他のドナーがついてきませんし、スケールアップも困難です。

なお、バングラデシュでは、チッタゴン丘陵地帯に少数民族問題があり、政府と先住民が対立しているため有効な政府が存在せず、コミュニティ作りが喫緊の課題という、従来の典型的な「人間の安全保障」状況が存在します。現在、UNDPを中心に、まさにコミュニティ作りのような支援が始まっており、こちらに参加してプレイアップする可能性についても検討中です。

以上、取り急ぎ当地の状況について、私見を交えて簡単に説明させていただきました。ご参考になれば幸いです。

在バングラデシュ日本大使館 紀谷昌彦

 

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