2005/03/25

国家公務員/国際公務員と「私」

中村さん、宮本さん、植田さん、吉原さん、柴田さん、秋山さん、塚田さんDC開発フォーラム・NY国連フォーラムの皆さんへ

在バングラデシュ日本大使館の紀谷です。世界各地からのご意見を楽しく拝読しています。私からも若干の感想を投稿させていただきます。

●組織と個人の対立?

国家公務員や国際公務員にとって、「組織が決定した価値・方向性」と「個人の信じる価値・方向性」が食い違うときに、どのように行動すべきか、という問題提起をいただきました。これについては、植田さんの指摘されるように、そもそも組織の価値・方向性は柔軟なものである、ととらえるべきものではないかと思います。

どの組織も、ミッション・ステートメントのレベルまで遡れば、とても有意義に感じられるのではないでしょうか。たとえば日本政府も、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」という憲法のもと、様々な関係者が議論し、協力しながら仕事をしています。

中村さんがおっしゃるように、そのなかで組織文化や組織の自律的な動きが制約・障害と感じられるのであれば、高次のミッションを胸に、組織文化の改善・変革(チェンジ・マネジメント)に取り組むことも、一つの良い選択だと思います。むしろ、政府にせよ、国際機関にせよ、もし不適切な制約・障害を感じるとすれば、居残ってそれを取り除くことこそ大事な仕事でしょう。

新たな価値は、このような歪みやギャップが存在するところに眠っていることが多いと思います。「縦割り主義」「お役所主義」「無謬神話」の結果として生じている組織・部局間の情報・知見のギャップを裁定(arbitrage)すれば、双方にとってメリットが生じます。相互信頼に基づくネットワークがあれば、このような裁定がやりやすくなります。

中村さんは、「組織や制度というものは、一個人および一個人のネットワークの自由(=開発、安全保障、尊厳)を守り実現していくために存在するもので、その逆ではない」と主張されていますが、ゆるやかなオープン・ネットワーク(具体的にはDC開発フォーラムやNY国連フォーラムなど)は、個人のみならず、実は組織にとっても大きな価値・利益をもたらし得るものだと感じております。(むしろ、組織が音頭をとってそのようなネットワークを作ってもおかしくないと思うくらいです。)

国連で扱っているようなグローバル・イシュー、特に開発問題については、大部分の情報・知見は公開可能です。これらの情報・知見を効果的・効率的な形で積極的に組織外に出すことで、その組織に対する関心・信頼が高まり、理解が深まるのみならず、それに対する反応や議論を通じて情報・知見の質を高められるように思います。

現在の大部分の情報・知見は、占有することではなく、発信することにより価値が高まる、という点につき、多くの組織は認識しはじめていると感じています。そして、そのような認識を持ち、実践する組織こそ(個人も?)、今後発展していくのではないでしょうか。

●個別利益と共通利益?

また、宮本さんからは、「日本は財政面で貢献しているのに何ら地位を得ていないと不満を持つが、その貢献のわりには政策論や国際的な共通利益の問題での主導力がない。自分の利害だけでなく、自分の利害を全体の中で位置づけ、全体の利害を強化する政策を示していくのが国連外交です。」との緒方貞子氏の発言を引用いただきました。そして、国際会議で日本の代表団が代表スピーチ以外ほとんど発言しなかった事例をもとに、その理由はどこにあるのか、との問題提起をいただきました。

塚田さんのいうように、国際会議でのプレゼン(言葉や文化の問題もあり国際連盟の昔から得意な分野ではないかもしれません)だけでなく、総合力・実行力・信頼感も大事だと思います。

しかし、国連外交にせよ、開発援助にせよ、特に欧米等と比べて、「うまく国際的にプレゼンできない」というコンプレックスと、「実際は日本こそやっているんだ/他国こそ言葉ばかりだ」という自尊心の入り混じった気持ち(自省を込めて申し上げます!)を乗り越え、等身大で、自然な形で取り組むことが必要ではないかと思います。短所は短所、長所は長所と素直に受けとめることが、将来にとって有益だと思います。

結局のところ、日本の利益と世界や他国の利益を一致させ、増進する構想力と実行力が求められているのでしょう。限られた自分の経験をもとに申し上げれば、このためには、「国際的な共通利益を推進する強い意思」と、「国内外の様々な関係者と意見交換し、共通点を模索するコミュニケーション能力」が特に大事ではないかと感じております。

どこの組織にもある問題ではないかと思いますが、前例や周囲を見て、自らハードルを下げてしまうと、そこから先に進むことは難しくなります。逆に、目線を高く持ち、背伸び(ストレッチ)をして、より高次の利益、より中長期的な利益を目指せば、新たな価値や能力を引き出すことができるように思います。そして、日々新聞を賑わせるような主要外交課題だけでなく、個々の小会議や途上国現地での外交・開発援助まで、個々の担い手が気概と充実感を持って取り組めるようにしていくこと(マネジメントの改善)が大事だと思います。何しろ、日本は大きいのですから。

●実践と発信!

議論は議論で必要なのですが、物事はやってナンボ、結果を出してナンボというところがあるので、評論家にならずに、議論の結果をどのように実行に移していくかというところも重要だと思います。

昨日、スタディツアーの大学生十数名が、ダッカ到着直後の最初のプログラムとして、在バングラデシュ日本大使館を訪れました。「日本人は途上国に援助すべきか」という尋ねたところ、お金が有効に使われるかわからない、技術を教えるのは良いがお金まで出す必要はない、まずは途上国の金持ちが国内で援助すべき、といった意見が大勢を占めました。

しかし、「あなたがもしバングラデシュの国民で、親も子供も病気になり、医療制度も社会保障制度も不十分という状況に置かれれば、先進国に助けてほしいと思うか」と尋ねたところ、先進国では豊かな生活を送っているのだから、一時的にでも援助してほしい、豊かになった暁には他国に援助をして恩返しすべき、という意見になりました。

以前、小和田恒氏がDC開発フォーラムBBLで述べたように、開発問題は(経済問題というより)国際社会の社会問題という捉え方をするのがわかりやすいと思います。途上国の人たちを、日本という社会の部外者と捉えるのか、あるいは世界という社会の一員と捉えるのかによって、上の答えのニュアンスの違いが出てきたのではないかと思います。日本国内の一人一人と、世界と日本の問題について対話する重要性を改めて感じました。

日本と世界を結びつけ、そして日本が世界の中で「主導力」を更に発揮していくためには、様々な正面での仕事が必要になってくると思います。DC開発フォーラムやNY国連フォーラムが、世界各地でそのような努力をしている人たちが、お互いの取り組みを紹介し合い、励まし合い、そしてエネルギーを与え合うような場になれば良いと思っております。

長い投稿になってしまい恐縮です。今後ともよろしくお願い致します。

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在バングラデシュ日本大使館 紀谷昌彦
Embassy of Japan in Bangladesh
Plot # 5&7, Baridhara, Dhaka, Bangladesh
Tel: +880-2-8810087
Fax: +880-2-8826737
E-mail: kiya@kiya.net
Website: http://www.bd.emb-japan.go.jp/

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