2005/03/12

世銀チーフエコノミストのバングラデシュ来訪/国連開発援助枠組み(UNDAF)案の発表

DC開発フォーラム、NY国連フォーラム、バングラモデルの皆様

在バングラデシュ日本大使館の紀谷です。DC開発フォーラムでは、ワシントンでの各種行事の案内や、スリランカからの津波復興支援報告など楽しく拝読しております。NY国連フォーラムでは、明10日に津波被害への国連支援の勉強会が開催されるのですね。報告をお待ちしております。

バングラデシュのダッカでは、本9日、世銀・国連関係で面白い行事がありましたので、複数MLへの投稿となって恐縮ですが、報告させていただきます。

1.世銀チーフエコノミストの当地来訪

9日の朝8時過ぎからダッカのショナルガオンホテルで、当地来訪中の世銀チーフエコノミスト兼上級副総裁(Mr. Francois Bourguignon)を囲んでの当地ドナー朝食会が開催されました。世銀の政策に強い影響を与える人物ということで、主要国大使、ドナー常駐代表をはじめ多数の出席がありました。日本からは、堀口大使、天田JBIC首席と私が出席しました。

同氏の冒頭スピーチでは、2005年が「開発の年」ということで、3月のパリ援助効果向上フォーラム、英国のアフリカ委員会報告書発表、3月末の国連事務総長報告、4月の世銀IMF春会合、9月のMDG+5国連総会、そして12月の香港WTO閣僚会合などの日程を説明しました。そして、追加的資金は必要だが、国レベルで追加的資金を効果的に活用するための「実施」が課題であることを強調していました。

バングラデシュについては、今回が初めての来訪ということで踏み込んだ分析はありませんでしたが、ガバナンスについて大きな問題を抱えながらも、経済成長面ではマクロ経済運営は良好で5%以上を達成しており、また社会開発面でも国民所得が低い割には指標が良いという「パラドックス」があると幾度も述べていました。

質疑応答で当方より、「MDG、PRSP、調和化と国際開発アジェンダが次々打ち出されてきたが、今や個別の途上国現地での実施、具体的には成長の源泉、民間活用、それを可能とする政治的指導力等が必要な段階に来ている。最新の経済学的見地から、このような現段階での効果的な処方箋についての洞察・示唆は何か」と尋ねました。

それに対する回答は、「援助マネジメントは最近大幅な変貌を遂げ、国によりPRSPへの習熟度や主体性(オーナーシップ)の度合は様々なので、現時点では、成功例を相互に学習するプロセスこそ最も大事である。PRSPの成功・失敗を判断するには早すぎる。ただし、MDG、PRSPなどで掲げられた様々な目標を整合的なものとする枠組みの構築は必要である。政治的指導力の問題は、透明性の確保を通じて改善するだろう。」といったものでした。

また、ガバナンスの改善について、出席者からは、ドナーがどのように協力すれば成果を出せるのか、選挙が近づいている中で改革の推進は困難ではないかといった問題が提起され、随分議論が行われました。

なるほどと思ったのは、出席者から、「世銀はバングラデシュの各種社会指標がアフリカや南アジアの諸国と比べて良いという点を強調しているが、実際によく見ると国内の貧困層へのしわ寄せや教育の質の問題などがあり、状況はかなり深刻である。バングラデシュを高く評価してしまうと、現状に満足してしまい、改善への意欲・野心がなくなってしまう。」との指摘があったことでした。問題ばかりを指摘すると、反発して耳を傾けてくれなくなってしまう一方で、良いところを褒めすぎると、改善への意欲がそがれるということで、「客観的」な各種指標を「主観的」にどのように評価するかという「心もち(?)」の重要性を改めて感じました。

1990年にナイジェリアで在勤していた時、当時の世銀チーフエコノミストのローレンス・サマーズ氏(後に米財務長官・ハーバード大学学長)が来て、目から鱗が落ちるような講演を聴いて大変感銘を受けました。大論争を起こしたスティグリッツ氏、堅実だったニック・スターン氏なども迫力がありましたが、今回ブルギニョン氏を囲んでのガバナンスを巡る議論を聞いて、「これは経済学の大御所でもなかなか一刀両断に整理できない難しい問題なんだなあ」
と改めて感じた次第です。

ワシントンDCの皆さんは、ブルギニョン氏の講演を聞かれたことがありますでしょうか。どのように評価されていますでしょうか。個人的な気持ちとしては、いつか日本人もこのようなポストで活躍していただきたいと思っております。(コンプレックスでしょうか・・・)


2.国連開発援助枠組み(UNDAF)案の発表

引き続き、午前9時から同じホテルで開かれていた2006-2010国連開発援助枠組み(United Nations Development Assistance Framework, UNDAF)案を議論する戦略セミナーに移動しました。(スウェーデンやADBなども同じく「横滑り」していました。)UNDAFは、国連関係機関が共同して作る国別援助計画で、冒頭にバングラ政府とUNDP、FAO、ILO、IOM、UNICEF、UNESCO、UNFPA、UNHCR、WFP、WHOバの10機関の署名欄があります。

セミナーでは、バングラ政府財務計画省高官と国連常駐調整官が共同議長を務め、国連機関代表や主要職員が勢揃いしての大変密度の濃い会合でした。バングラデシュの関係省庁や各種NGO、職業団体からも出席があり、先のドナーばかりの会合と違って、バングラデシュ人からの意見・質問が9割を占めていました。実務的かつ建設的な意見が多く、スウェーデンの代表も、「さっきの2階の朝食会から1階のセミナーにきたら、地に足のついた議論になった」と発言して笑いをとっていました。

バングラデシュで国連がUNDAFを作成するのは今回が初めてとのことで、数ヶ月前から頻繁に国連各機関の代表が会議を持ち、力を入れて作成していました。中身は、(1)民主的ガバナンスと人権、(2)保健・栄養・持続可能な人口、(3)教育と貧困層に配慮した成長、(4)社会的保護と災害リスク軽減、(5)ジェンダーの衡平性と女性の立場強化、(6)エイズの予防と患者の保護の6本柱でした。

UNDAFの発表と意見交換に続き、複数年度の計画を持つUNDP、UNICEF、UNFPA、WFPからの個別の発表もありました。同じ問題(例えばエイズや民主的ガバナンス)に対し、複数の国連機関がそれぞれの立場から強みを生かしながらアプローチしている様子がわかり、大変勉強になりました。終わった後の食事でWFPの人に「短時間で全体像がわかって大変勉強になった」と言ったら、「それは私たちも全く同じよ!」と笑いながら言っていました。確かに、国連の中でも他の機関の活動に関わることは少なく、縦割り構造なのでしょう。

国別援助計画の策定プロセスのみならず署名者に相手政府が参加していること、モニタリング評価も相手政府と国連で評価委員会を作って中間評価・最終評価を行うこと、評価の指標としてMDGの指標をふんだんに使っていること(投入との因果関係はどう評価するのでしょうか?)などについて、興味深く思いました。

当方からは、UNDAFのモニタリング評価をバングラデシュ政府自身によるPRSPの評価と連携して透明性を持って行うべきではないか、UNICEFについて緊急的支援と持続可能な制度構築のバランスに配慮すべきではないか、WFPについて恒常的な食糧不足は津波等と違って関心を引き難いので、他の開発パートナーと連携してExit Strategyを考えるべきではないか等の指摘を行いました。説明を聞き意見を述べる中で、国連第二位拠出国の日本として、首都・本部レベルのみならず、国連の途上国現地での戦略立案や活動について、きちんとモニターし建設的に関与していくことは大変重要なのではないかと改めて実感しました。

後半セッションの共同議長を務めた財務計画省のPRSP責任者からは、良い計画だか、実施された分だけが意味を持つと最後に指摘していました。実施段階で様々な障害にぶつかる当国の現状を踏まえた重みのある発言と感じました。

最後に、国連常駐調整官は、国連のことをよく知らないまま批判をする人は多いが、現場の活動を実際に見ればいかに有意義かを理解してもらえると思う、特に幾つかの事業は安価で大きな効果を上げている、とのことばで締めくくっていました。

先般のスリランカ等での津波災害対応でもそうでしたが、専門性や迅速性、地方での実施能力など、国連には様々な強みがあると思います。日本としても、「国連を通すと顔が見えなくなる」といった一般論でマルチ援助に疑問を呈するのではなく、途上国現地で国連を効果的に活用し連携して、少しでも大きな成果を目指していくことが大事ではないでしょうか。

UNDAFと関連パワーポイント資料は、数日内にバングラデシュ現地ドナー調整グループのウェブサイトに掲載される由です。もしご関心がありましたらご覧ください。
http://www.lcgbangladesh.org/

NYやジュネーブの国連本部の皆様、あるいは当地を含め各フィールドの皆様は、UNDAFプロセスについてどのように評価されていますでしょうか。また、日本としてどのように関わっていくべきでしょうか。ご意見を伺えれば幸いです。


3.おわりに

同日夕刻、東京都武蔵野市「国際協流感じ隊」のシャプラニール連携スタディツアーで当地来訪中の大学生5名(と引率のシャプラ中森さん)に対して、日本の対バングラデシュODA、そして現地ODAタスクフォース(バングラデシュ・モデル)について説明し、逆に当地来訪の動機や来訪しての感想などを伺いました。

ストリートチルドレンや国際保健、開発経済、開発教育など動機は様々で、感想も「乞食にお金をあげるべきか、あげないべきか悩んだ」「日本人にとっての幸せをバングラデシュ人に当てはめられるのか」「ストリートチルドレンに実際に会ってみると、あまりにも自分と違いすぎて共感を持てず悩んだ」など各人違ったものでした。

世銀との切磋琢磨、国連との連携が大事といっても、まずは一人一人の日本人が、自らと開発問題のかかわり、そして日本と開発問題のかかわりについて悩み、考えるところから始まるのではないかと思います。そして、日本人の気持ちと、相手政府・国民そして他ドナーなど多くの関係者のベクトルをいかに合わせていけるかが、開発問題への解決に向けての鍵になると感じております。


かなり長い投稿になってしまいましたが、終わりまで読んでくださった皆様、どうもありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

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