2005/04/28

北岡大使講演「国連改革および日本の役割について」

UNフォーラムの皆さまへ

コロンビア大学国際行政学院の橋本のぞみです。

4月8日、コロンビア大学において、国連代表部の北岡大使による講演がありましたので、概要を以下にご報告します。日本の安保理常任理事国入りに関する議論を中心に、きわめて明確かつ包括的な講演で、改めて日本の国際社会における立場と役割について考えさせられました。

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「国連改革および日本の役割について」

1. 日本にとっての国連
1989年以前の冷戦時には、日本にとっても世界にとっても国連の存在意義は現在ほど大きくありませんでした。当時は米ソ両大国による主導権争いのため、どちらかの陣営による拒否権行使が頻繁に発生し、国連は現在ほど有効に機能していなかったのです。冷戦終結とともに国連の役割は飛躍的に大きくなりましたが、その象徴ともいえる出来事が1991年の湾岸戦争でした。日本ではこの湾岸戦争を機に自衛隊の海外派遣についての議論が活発化し、92年のPKO法成立につながりましたが、国連自体も、90年代のPKO派遣の激増に象徴されるように、国際社会での役割を拡大しています。ここで重要なのは、単に平和維持活動部隊の数を増やすというだけでなく、紛争予防やPKOの活動範囲の拡大など、平和維持活動の質の向上が肝要だということです。冷戦終結に伴う国連の国際社会における重要性の向上に伴って、日本の安全保障理事会常任理事国入りが、重要な政治課題として認識されるようになってきたという経緯があります。

2.日本の安保理常任理事国入りのメリット
 日本が常任理事国入りすることで得られるメリットには(1)よりレベルの高い情報を得られる、(2)安保理を通じて日本の考えを世界によりよく注入することができる、ということがあります。たとえば、現在安保理での議題の70~75%がアフリカに関するものですが、直接利害関係のある各国はなかなか国益に反する情報を出そうとはしません。アメリカ、イギリス、フランスなどは日本に情報を教えてくれますが、入手できるのは各国の国益に都合のいい形での情報になってしまします。日本は常任理事国となることでより速く偏りのない情報を手に入れることができるようになり、同時に中立的な立場でより深くアフリカの諸問題に関わることができるようになります。
 また、日本は現在アメリカに次いで二番目に多額の国連分担金を負担しており、さらに経済規模を考慮すると、その国連への貢献の大きさは際立っているといえます。19.4%の分担金を出資している日本が安保理での十分な発言権を持っておらず、わずか2%の中国や1%のロシアが拒否権を持っているという現状は非常に歪んでおり、日本の常任理事国入りには現状を是正するということです。
 日本が常任理事国になった暁には一体どのように国連に貢献するのかという議論がありますが、私は今までやってきたことを継続していくことで十分意義があると認識しています。日本はこれまで、例えばアジア地域での開発援助の成功や人間の安全保障の概念の提唱など、国際社会の場ですでに積極的な貢献をしてきています。他方で、国連にとっては、日本の常任理事国入りはより安定した日本からの出資の確保を可能にしますし、東アジアにおける日本の開発援助の成功に学ぶこともできます。

3.常任理事国入りへのステップ
 常任理事国入りへ向けてのステップですが、まずは総理自らの強いコミットメントを得ることから始まりました。私がこの職に就いた1年前には、まだ、日本国内では常任理事国入りへ向けての強いムードが醸成されていなかったのです。他方で国連においては、途上国の強い要求を受けて、日本とドイツの常任理事国入りという最低限の現状調整だけではなく、より根本的な安保理改革が課題となってきていました。そのような中、昨年具体案としてA・B両案が提示されて以降は、日本は常任理事国の拡大を含んだA案の支持を訴えてきました。
 A案には、常任理事国の拡大だけではなく地域設定の見直しが含まれており、これが障害になってA案を支持しない国もあります。しかしながら、3月21日の事務総長報告に対し、加盟191か国のうち160か国が改革の必要性を表明しており、さらにうち120か国が常任・非常任理事国両方の拡大を支持しており、現在は最終合意に向けての機運が高まってきているといえます。
 一方ここへ来て、異なる立場の国同士がグループを組み、それぞれの主張を活発に主張しあうようになってきています。日本は2005年度中の合意実現を目指し、「Reform5」を結成しましたが、これに対しより幅広いコンセンサスを得ることを優先し、決定を急ぐべきではないとするグループも「Uniting for Consensus」を結成しました。なお、コフィ・アナン事務総長自身は「コンセンサスを得ることを口実に、改革を遅滞させてはならない」と発言し、今年9月までの決定を強く後押ししています。コンセンサスを主張する国の代表格はイタリアとパキスタンですが、それぞれドイツとインドの常任理事国入りに対する反対が背後にあります。また、最近中国・韓国による日本の常任理事国入りへの強い反発も出ています。
 早期決定に反対する国の中でもっとも重要なのはアメリカの動向です。アメリカは日本の常任理事国入り自体には賛成しているのですが、その他の問題、特に安保理の拡大に難色を示しており、またアメリカの国内事情との関連で、自国のペースでこの問題を進めたがっています。
 今後の展開ですが、6月にまずは安保理拡大の枠組合意がされ、その後投票による新理事国の選出、総会による国連憲章の改定、さらに総会および現常任理事国による批准、と続きます。批准に2~3年かかるでしょうから仮に今年憲章改正決議が成立したとしても、実際に日本が常任理事国入りするのは2008年ごろではないかと予測しています。

4.常任理事国入りへの課題
 現在中国および韓国で日本の常任理事国入りに対する反対運動が活発化しています。しかし、戦後60年の歴史を振り返って、日本ほど世界に誇れる国際貢献を行ってきた国はありません。安保理常任理事国の要件が世界の平和構築と秩序維持への貢献にあるならば、日本ほど妥当な国はないといえるでしょう。
 過去の歴史に対し、十分な謝罪を行っていないという批判もあります。しかしながらこの批判は歴史解釈の相違によるところが多分にあります。もちろん今のままでいいということではなく、きちんとした環境の下で双方の歴史学者による歴史見解の相違のすり合わせを行うことが重要です。韓国とはすでにそのような取り組みが始まっています。
戦争終結は、通常、国境の再画定・戦争犯罪人の処罰・賠償によって戦後処理がなされます。日本の敗戦時にも、これらの処理がなされました。もちろんこれだけで戦争の被害者が納得できるとは思いませんが、どこでも同じです。日本は、このような世界における標準的な戦後処理は十分に行っており、われわれはさらに建設的に前進していかなければならないのです。

質疑応答(抜粋)
(問)国連は米国によるイラク攻撃に象徴されるように、あまり機能していないという批判がありますが、なぜ日本はそれでも常任理事国入りを果たしたいのですか。
(答)冷戦期に比べれば国連はずっとよく機能しているといえます。また、アメリカも歴史の中で軌道修正を重ねてきた国です。さらにアメリカ自身が実は国連システムにおける最大の受益者であることを考えれば、今後アメリカが完全に国連を機能不全に陥らせる心配はないと思います。

(問)EUのように、今後アジアでの各国共同体ができる可能性はありますか?
(答)すぐに東アジア共同体が実現するというのは難しいでしょう。ひとつの障害として、中国が非常に大きい人口を抱えており、各国間のバランスが悪いことが挙げられます。

(問)常任理事国入りに伴い、より幅広い国際貢献が期待されることになりますが、その場合憲法第九条の改定はありえますか?
(答)現在の平和維持活動の大半は武力の行使ではなく、平和構築プロセスにおける後方支援活動や技術援助などです。したがって憲法第九条の枠組みの中でも、国際貢献は十分に可能です。

(問)国内総生産の0.7%というODA拠出基準を日本は現在満たしていませんが、常任理事国入りに関連して今後拠出額はどのように変わっていくのでしょうか。
(答)このODA拠出基準に関してはいくつかあいまいな部分があります。なぜ拠出額の総額ではなく国民一人当たりで基準設定がされているのかという問題、また、過去のODAの返済分が相殺されるため、返済を多く受けている日本は拠出額が少なく計算されてしまうという問題があります。また、開発援助は単に金額を拡大すればいいというものではなく、援助受入国の政治体制や社会環境など、援助を有効利用できる環境が整っていることも必要です。経済援助というのは、そもそも難しいもので、日本以外で成功した国はありません。今後日本は過去のアジアでの成功をベースに、アフリカ向けの援助を拡大していくなど、ますます積極的に開発援助に貢献していきます。

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