2005/06/09

成長か貧困か、そもそも開発か?

皆様へ、

 国連代表部経済部の須永です。当代表部で主催したシンポジウムで議論されたとがこのフォーラムで議論の的になって喜んでいます。このシンポジウムは、日本は9月の国連首脳会議に向けて安保理改革だけをやっているわけではなく、開発にも一生懸命取り組んでいることを示すことが目的でした。でも、ただ開発と言ってもMDGsなどは国連では飽きるほど議論されているので、新味を出すために、これまであまり注目されてこなかった、内陸国や小島嶼国、それから日本が得意としている南南協力などに焦点を当てることにしました。
 ステイグリッツ教授に私がお願いしたときには、特に注文はつけずに同教授の開発に関する考えを披露していただきたいと伝えただけでしたが、同教授は、期せずして、成長は必ずしも貧困層に裨益しない、援助は万能薬ではない、農業生産性の向上が必要、国際貿易における特恵措置の拡大が重要、知的所有権の問題や熱帯雨林の保護も重要と述べるなど、多岐にわたる論点に触れた上で、援助においてone-size-fits-allな考えは機能しないと最後の方でまとめていました。日頃、当代表部が述べていた論点(日本と考え方が違う点もありましたが)が取り上げられて、少々おどろきました。国連においてはミレニアム・プロジェクトのサックス教授が活躍しており、当代表部でもかなりの頻度で同教授と議論をしてきましたが、私は、同教授の主張がMDGSを達成するためには援助資金の量を増大しなければならないという点に焦点が当てられすぎていると考えており、今回のシンポジウムではステイグリッツ教授にお願いして、結果としていろいろな論点が出てきて良かったと思っています。このシンポジウムの模様はいずれ当地のForeign  Policy  Associationのホームページにも掲載される予定ですので、関心のある方はお読みください。
  ところで、貧困撲滅と経済成長の関係についてはいろいろな研究があり、私のようなものが語るには大きすぎるテーマですが、政策的な含意も多いと思います。私が携わった新ODA大綱においてもこの問題は大きな議論になりました。日本は東アジアの経験などをふまえて経済成長を通じる貧困削減を主張しているわけですが、ステイグリッツ教授が言っているような有力な反論(久木田さんのメールを参照)もあるわけです。でも最近では、英国のアフリカ委員会報告書も経済成長の必要性を認めているし、以前の貧困削減一辺倒から少しずつ流れが変わってきているような気もしています。因みに、この議論の政策的含意の一つとしては、日本の主張が正しいとするなら、インフラを重視して借款も投入する援助政策もある程度有効ということになるでしょう。ただし、外務省の経協局にいるときに、私が学者やNGOに同様の主張をしたらいろいろな反論に会いました。まさに紀谷さんが言うように国ごとに考える必要があって、one-size-fits-allな結論はないのかもしれません。
  話しは尽きませんが、当代表部のシンポジウムが契機となり、この古くて新しい問題がこのフォーラムで議論されたこと歓迎します。

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