2005/06/07

成長か貧困か、そもそも開発か?

DC開発フォーラム、NY国連フォーラムの皆様

在バングラデシュ大の紀谷です。ユニセフ本部の久木田さんからの投稿を機に始まった本件議論を興味深く拝読しております。NY・ジュネーブと来たので今度は途上国現地からということで一言コメントさせていただきます。(脱線ですが、最近世界各地から活発な意見投稿があって面白いですね。)

当地での実感としては、「成長か貧困か」ではなく、「成長も貧困も」大事であり、双方とも実現するための方策は、国ごとの創意工夫が重要、というものです。

成長と貧困の関係を分析し一般化・定式化することは、学術的に興味がある話ですし、途上国全体を十把一絡(じゅっぱひとからげ)に見なければならない国際機関・会議や先進国での議論にとっては重要なのかもしれません。また、そのような分析が、あるいは個々の途上国にとって新たな視点をもたらすのかもしれません。

しかし、個々の途上国を見た場合に、まず大切なことは、それまでの開発努力の成果と問題点を分析し、どのようにすれば最も効果的に中長期的な国民の貧困削減を達成できるかということではないかと思います。

例えば、バングラデシュの場合は、貧困層に焦点を当てた巨大ローカルNGOであるBRACの活動、同じく貧困層へのマイクロファイナンスを推進したグラミン銀行などがありますが、(都市国家を除き)世界最大の人口密度・1億3千万人以上の人口を養うには、輸出の8割を占める縫製業や新たな産業の開拓で成長を確保する必要があります。そのためには、電力・港湾・道路・橋等の大規模インフラや規制枠組みの改善等が重要です。

このような視点から、バングラデシュのPRSPでは、「成長、人間開発、ガバナンス」の3政策をベースに、国の社会的・経済的エネルギーを開花させる(Unlocking the Potential)ための触媒として、「雇用、栄養、母子保健、水・衛生、初等・中等・職業教育、警察・司法、地方行政」という7つの(中期的)戦略課題を掲げています。

成長と貧困の関係に関する美しい整理は、途上国毎の現実に適用した場合に雲散霧消してしまい、国毎に「まず何に取り組むべきか」というCritical Driversの発見こそが大事なのではないでしょうか。

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というのが開発の世界の議論なのでしょうが、ここで、6月6日に発表された財政制度等審議会の「平成18年度予算編成の基本的考え方について」という建議を見ると、次のようなラインになっています。

「6.政府開発援助

 ODAに対しては、国民より、その効果や効率性について様々な批判があり、その規模についても厳しい見方がなされている。会計検査院等からもODA事業の非効率な事例の指摘が数多くなされている。こうした国民の厳しい見方や深刻な財政状況に鑑み、これまでODA予算の縮減を図ってきたところであるが、極めて厳しい財政事情の下、今後も量重視から質重視へ考え方の転換を図りつつ、援助対象国の一層の重点化や援助手法の見直し等による、徹底した戦略化・効率化を進め、予算の縮減に取り組んでいくべきである。

 また、近年、国連分担金やPKO分担金等の国際貢献に関する財政支出が増加してきているが、厳しい財政事情に鑑み、これらの経費のあり方についても厳しく見直していく必要がある。」

http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/tosin/
zaiseia170606/zaiseia170606.htm


世界での問題の状況に一切言及がなく、国民の批判や会計検査院の指摘のみを引いて、極めて厳しい財政事情の下、予算の縮減を提案しています・・・

日本の開発関係者としては、開発政策研究の最先端の議論に参画しながら、他方でそのような事情にほとんど目を向けない人たちに対して、日本が開発問題の解決に向けて重要な役割を担う意義を説明していかなければならないという、厳しい二正面作戦を今後とも続けていかなければならないと思います。

このような中で、例えば「国内の更なる公共事業と海外援助のどちらが重要か」、また「国内の公共事業の無駄を省いて海外援助にまわすべきではないか」といった、国家予算のパイの配分に関する明示的な政策論議も行う必要があるのではないでしょうか。

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最後に情報紹介ですが、6月6日に東京でODA総合戦略会議が開催され、その資料がウェブサイトに掲載されました。対アフリカ支援、我が国のODAを巡る現状と課題、ガーナ・エチオピア・バングラデシュ国別援助計画等の関連資料を見ることができます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/kondankai/
senryaku/22_shiryo/giji_s_1.html


特に、ODA評価有識者会議による平成16年度評価結果の概要に記されている提言は、戦略的・効果的・効率的援助、援助能力の強化(事業の質の確保、援助スキームの改善・柔軟化)、ドナー協調に対する柔軟な対応、上位計画・行政能力向上に対する支援、MDG関連の支援の強化など、いずれも貴重なものです。(バングラデシュ国別評価の結果も盛り込まれています。)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/kondankai/
senryaku/22_shiryo/shiryo_5.html


このように、東京で行われる会議の資料が翌日にはウェブに載るというのは大変ありがたいことです。(ちゃんと遠くで読んでいます!)

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以上、随分長くなってしまいましたが、今後とも、ML上で議論しつつ、私たち自身による具体的な行動につなげていくことが大事ではないかと思っております。皆様からの投稿を楽しみにしております。

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