2005/06/09

ODAの質の改善と国際水準の確保を

在ワシントンの吉野です。

経済成長が必ずしも貧困削減につながらないこともあるということは大切なポイントであると思います。同時に、経済成長なくしては貧困も削減されないということも一般には言えましょう。特に政治経済的にはなかなか困難ではないでしょうか?

もちろん先進国であうと途上国であろうと、パレート最適な経済にあるわけではないので、その意味ではゼロ経済成長でも政策手段によっては貧困削減が可能であると思いますし、また勿論のことながら、貧困削減が必ずしも所得のみによって示せるものではありません。

ただいくら概念的には「成長」と「貧困削減」を対峙させて議論することができても、経済全体の政策レベルではone or the other といった話でも無くなっていると感じています。経済成長という政策目標を一つのベクトルであるとすれば、貧困削減という政策目標のベクトルは必ずしも正反対を向いているわけではありません。二つのベクトルの間は鋭角、ベクトルの和をとることによって、mutually reinforcingなものであるべきでしょう。また、植田さんがおっしゃっているとおり、長期的に貧困撲滅が経済成長に資するということも考えられます。

もちろん、「成長」と「貧困削減」の二者択一的な構図というのは、政策判断、あるいはドナーによる政策介入のマージナルな部分においては、あって当然です。しかし、総合的なレベルで議論するのであれば、いかに二つをミックスさせていくかということを、国レベルの開発政策を考える。

その意味で、成長と貧困削減の関係を考える際に、途上国を一つとして考えるのは、非現実的です。正に紀谷さん・須永さんがおっしゃっていたように、途上国各国の個別状況によって「成長」「貧困削減」の関係が意味することは変わってくるのだと思います。6月1日の就任初日に行われたWolfowitz新総裁による行内タウンホールにおいては、各地域のカントリー・オフィスとの間のビデオ会議リンクも張られており、バングラやらブラジルなどから、それぞれ管轄の「お国事情」を反映してのコメントが新総裁に向けられておりました。例えば、サブサハラ・アフリカと中所得国においては、経済成長が貧困削減にいかなる意味をもつのか、あるいは貧困削減が成長にいかなる意味をもつのか、またどのような政策介入がなされるべきか、ずいぶん異なるわけです。またアフリカの中でも相当ばらつきがあるわけです。(日本も旗振り役で活躍した新開発戦略では、包括的アプローチとともに個別アプローチというのがありましたね。)

さらに、私個人としては、「貧困削減につながる成長策」というマクロからミクロへ効果を下ろしていくアプローチとともに、「成長につながる貧困削減策」とでも申しましょうか、ミクロからマクロへ効果を押し上げていくアプローチも考えることが、開発実務者の間で考えていくことが大切だと感じています。これまでもマクロ・エコノミストが中心となり、前者のアプローチの分析・政策介入はなされてきましたが、これからは同時にセクター・レベルの専門家あるいはセクター・エコノミストにより後者のアプローチであるミクロ・レベルの成長・貧困削減を如何にマクロにつなげていくかという開発支援策にエネルギーを費やすべきだと思います。(この二つのアプローチの間にもconsistency、連携が必要なことは当然ですが。)

世銀のアフリカ局では、チーフ・エコノミストであるJohn Pageを中心に、「sharedgrowth」という言葉が今年に入ってから流行っております。1月のSPA(Strategic Partnership with Africa)でも新たな貧困削減へのアプローチとしてembraceされたようです。(i) Promoting the private sector, (ii) creating an "export push" and effective regional integration, (iii) managing natural resource rentsの3つをShared growthへの重要な要素と捉えています。ここで民間セクター振興といっても、工業のみならず、農業、サービス産業といった幅広い分野での民間セクターの振興です。現在、世界中において継続的に企業データ収集が実施されている世銀のInvestment Climate Assessmentsも、サブサハラ・アフリカにおいては、農業、そしてまさに貧困削減と成長の関係を握っているインフォーマル・セクターも徐々にカバーしていく方向です。(インフォーマル・Souces of Growthのidentificationから始まり、それを成長を実現すべき政策介入・支援が続くことを期待しています。つまり二番目のミクロからマクロへの押し上げアプローチです。

なお、最後に中村さんがおっしゃっていたように制度変更の順序とスピードを考慮して変更を行うことは非常に大切なポイントだと思いました。以前一緒に世銀で仕事をさせていただいた方が力説していた点ですが、スタティックでなくダイナミックな文脈での政策のオプション化を考える必要があるでしょう。

吉野 裕

0 Comments:

Post a Comment

<< Home


Click Here