2005/07/20

「国連フォーラム・インタビューシリーズ」第一弾・パート3

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┃「国連フォーラム・インタビューシリーズ」第一弾 ┃
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●阿部信泰国連事務次長 (軍縮局担当)●


ーーー昨日送信されたパート2からのつづきーーー

4.軍縮・核不散分野で国際社会の現体制が抱える問題

Q.近年のマルチラテラリズムの機能の低下が叫ばれていますが、その原因とは? 各国のNPTの信頼が、今回の会議の結果により揺らいでしまったと思われますか?NPT体制全体に直に崩壊の危険が高まったと言えるのでしょうか?軍縮を求める非同盟諸国対一国主義的なアメリカ対マルチを好む欧州などの対立の原因、コメントをお願いします。

A. 今回の会議が上手くいかなかったのは、非常に厳格なコンセンサス・ルールがあって、一国でも反対すると会議が進まなくなる、というのが大きな要因の一つでしょう。これはジュネーブの軍縮会議がなかなか進まないのと同じで、手続き問題決定すら全員意見が一致しないといけないのです。このコンセンサス・ルールを変えようという動きがありますが、変えるのにもまたコンセンサスでないといけないのでなかなか動かない。コンセンサス・ルールは軍縮問題のように安全保障という国家の存亡に関わる非常に重大な問題については、ある意味ではやむをえない面もあります。

軍縮は国家の防衛という主権の中心となる問題なので、もしコンセンサス・ルールを緩めて多数決で決めても、おそらく反対国は離脱してしまうでしょう。そうすると仮に核兵器をやめようという決議を2、3の国が反対したにもかかわらず多数決で通しても、これらの国は核を持ち続けるかもしれない。そうすると何の意味もないんです。ですからそういう国に結論に従ってもらうには、やはりプロセスに入れなくてはいけない、やはりコンセンサスが必要になるというジレンマにあるんです。そこをどう克服するかが非常に難しい問題です。
北朝鮮のように一度コンセンサスで決めても離脱してしまう国もありますが、現システムでは抜けちゃうとどうしようもないんです。そこをどうするか。一つ言えることは、こういうマルチラテラリズムでNPT会議をやって何も結果が出なかったのは物事の流れとしては当然しょうがないので、関心国だけが集まって何かをしようという動きが強まるのはもう避けがたいということです。拡散安全保障イニシアティブ(PSI)の推進は、会議が失敗した状況を踏まえるとまったく好ましくないとも言えない。この動きがNPTと同じ方向に進み、条約を補完し強化する限りは悪いこととは言えないですね。

他には原子力供給国クループ(NSG)っていうのがあります。これは基本的に原子力関連資機材・技術の輸出管理ですけど、テロリストを匿っている疑義のある国などには流さないように規制を強化する。これは基本的にはNPTの趣旨に沿うわけですが、現実には疑惑を否定する国にも輸出が制限される可能性があり、それらの国は核の平和利用の権利が侵害されると不平を言っている訳です。その辺りの線引きが難しくなってくるんです。現状は輸出側が正しいと思う所で線を引いているのですが、輸入する側も話しあいに加わって公正に線を引くべきだと言う議論があります。それはまさに今回の会議で検討すべき項目だったんですが、それを含めて何も結論が出ずに終わってしまった。そうすると、皆で集まって結論が出なかったんだから自分らでやるしかない、となる訳です。

だからといってNPT体制が崩れるかと言うとおそらくそうはならないでしょう。但し、あきらかに信頼は薄れるだろうし、NPTに入る意味を疑問視する声は益々強まるでしょう。例えばエジプトのような国はそういう考えをもっているんですね。「自分はNPTに入ったために色んな輸入輸出制限を受ける、IAEAの査察も受けなきゃならない。なのに隣のイスラエルは条約に入ってないから特には問題はないとされ、核も持っているらしいし、まったく野放しになっている」と、不満は強まる訳ですよ。それが、エジプトが今回の会議で非常に抵抗した基本的な原因です。

それから、例えば北朝鮮が条約を脱退し核兵器の開発を進めていると、周りの国が「何で自分たちは妥協しなくちゃいけないんだ」と考えるのは自然の成り行きでしょうね。そもそも北朝鮮のような国が核への道に進まないように自分らは非常に複雑なIAEAの査察等を受け入れているのに、一体それを受けて何の意味があるのかと思うでしょうね。だんだんIAEAの査察なんてまともにやってられないといった国が増えてくる。ですから非常にマイナス効果が大きいんです。

ただし、だからといって日本等の国が政策を変更して核兵器の計画を進めるかというと、おそらくそうはなりません。やっぱり日本国民の総意がなかなかそうならないでしょう。ですからいろんな危機が訪れると言われていますけど、かといってそれはエジプトにしたってじゃあ明日脱退を宣言して核軍備が進むかと言うとそうは簡単にいかないんですね。NPTはすぐには崩壊しないと思いますが、だんだん説得力・影響力が弱まるのは避けられないでしょう。

(パート4につづく)

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