2005/07/20

「国連フォーラム・インタビューシリーズ」第一弾

皆様、

ペンシルベニア大学の片桐と申します。長田様、小谷様、非常に有益なご投稿をどうもありがとうございました。長田様のご意見は私の専攻にある程度関連しているので、今回は短いですが珍しく議論に参加できたらと思います。難しい問題なので、部分的にですがお答えします。

長田様の第一の問題点である、文民統制の懸念は非常に良い点で、よく思われるのとは逆に、「実際は軍人が戦争に対してより注意深く、逆に文民が戦争に走りやすい」という考えに沿っています。確かにアメリカに核不使用の保障がない事、そして有事の懲罰メカニズムの欠陥は心配の種です。しかしながら国家のリーダーはほぼ常に理性的です。通常兵器の使用にも増して、核兵器の場合はなおさらです。一般的にブッシュならびに現政権の安保チームは核兵器の使用に関しては高度の理性を見せており、威嚇・抑止を目的としての「政治的道具のための核」と呼ばれる理由はここにあります。阿部国連事務次長のご指摘もここにあるのだと思います。

しかし話を一歩進めますと、実際アメリカのような国家が核を使うという状況を予想するのは非常に難しいと思われます(911で2000人以上の犠牲者を出し、不屈の自由作戦展開中にも現在のイラクでも小型核を使う機会が何度もあります)。いわゆる「政治的道具のための核」、「最後の手段としての核」という問題ではなく、核兵器は脅しとしての利用価値さえも疑われる武器として考えられると思います。その圧倒的な破壊力とそれに伴うコスト(外交的孤立、経済制裁、報復の可能性、評判など)を考慮する場合、軍事的な効果を除いて核兵器の政治力は最小限だと思います。このような理由から私は核使用に対して楽観的であり、問題視するべきなのは、より抑止の効きづらい通常兵器の使用だと思っています。

長田様の第二の点に関しては同感です。テログループの経営側を除く多くのテロリストエージェントにとってはアメリカの核反撃に基づく抑止は効果が低いでしょうし、この点で今後もアメリカは問題を抱え続けると思います。
>3.核廃絶後の核抑止体制と安全保障体制について、軍縮関係者はどのようなビジョンがあるのか興味を感じました。もし国家が核を持たない世界秩序が実現するとしたら、核兵器保有の防止と懲罰は現在よりも一層厳格かつ迅速になる必要があると思いますがどうでしょうか?

私は軍縮専門家ではありませんが、核廃絶後の世界が仮にできたとしても、考えられるのは国家が核とは別のいわゆる「絶対兵器」を開発、配備し、冷戦中見られた相互確証破壊が別の種によって維持され、結果として軍事均衡が守られる形になると思います。通常軍備による一部の国家の連合が核拡散レジームに介入し防止するという考えは理解できますが、ではそれらの間での紛争は核という(もしくは他の型の)絶対兵器なくしてはエスカレートする力が強まり、軍縮とは逆の、いわゆる軍拡の方向に向かってしまう可能性も考えられます。長田様が最後に仰られる「核にあふれた世界は危険ですが、核のない世界も厄介に思われます。」の点は理解でき、基本的に同感なのですが、核以外の兵器(通常兵器含む)でも軍事抑止を維持する事が可能だと思われ、長田様の懸念に対する答えとしては、強国が通常兵器以外の兵器を配備し抑止しあい、結果としてバランスが形成されると思います。

国際安保学に出てくる概念をここで一つ紹介したいと思います。Glenn Snyder という政治学者が出した案で、stability-instability paradox というのがあります。何を意味するのかというと、核戦争は常に相互確証破壊によって抑止されています(従って stability)が、通常戦争はその上限度を知らず、国家は核使用のレベルにエスカレートするまで通常兵器の使用は許される、従って通常戦争の可能性が高まる(従って instability、という逆説です。

これらの考えはいずれにしてもテロリストに対しては大した問題にはならないとは思いますが、彼らの打倒の為核は必要なく(そしてコストが高く)、通常兵器の大掛かりな使用が中心になると思います。

駄文失礼しました。

片桐範之

Warmly,Noriyuki (Nori) Katagiri, Mr.Ph.D. student, Dept. of Political Science University of Pennsylvania http://blog.drecom.jp/norinorimissile 

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