2005世銀年次会合
NY国連フォーラム、DC開発フォーラムの皆さん、
今日、早朝からNYとDCの往復をして、ユニセフの代表として世銀の年次会合に出てきました。と言っても、世銀を統治する「開発委員会」の会議場には入れないので、他の代表団の人々と隣接する部屋で大画面のモニターを見ながら、様子を伺うだけなのですが。ただ、開発委員会でのやり取りは、世界の開発に関する重要な議論がどのように行われているのか知るためにも大変興味深いものでした。一昨年は、MDGのモニタリングをめぐって、WolfensohnとClare Shortの言い合いなどがあってちょっと迫力あるシーンが見られました。先々週の国連サミットでのMDGの扱いを受けてどう展開していくのかも注目です。日曜日のワシントンは人もまばらで、一時のような反グローバリゼーションのデモ騒ぎもないようでした。
今回の年次会合には私もいくつか関心を持っている点がありました。アメリカのイラク侵攻の理論的立役者であったPaul Wolfowitzが、世銀の総裁として始めての開発委員会でどのようなアジェンダ設定をするのかということと、世銀やIMFがG8で取り付けた債務の帳消しをどう考えているのかということです。
Wolfowitz総裁は昨日の演説でも、貧困、MDG、アフリカなどのWolfensohnのラインを守ったように思います。開発は、労働力と資本の投入で計算できるほど簡単でないこと、いわゆる「ソフト」の大切さ、そしてNelson Mandelaの言葉を引用してのみんなのためのリーダーシップの重要性、Grameen BankやBRACを引き合いに出しての市民と政府を結びつけるCSOの役割など、開発関係者が喜びそうなことをちりばめての発言でした。世銀内部の評価を受けてのインフラ重視に大きく傾くのではないかという見方もありましたが、そのあたりは、過去の反省に立ったインフラ事業という言い方で、バランスがとれていたように思います。今後のWolfowitzの理論展開がこのリーダーシップ論を中心としていくのか、注目です。
さて、開発委員会の最初のセッションの最後、正午前に出てきたのが債務帳消しの際のAccountabilityの問題でした。スイスの代表が債務帳消しには反対ではないが、これだけの金額(HIPCにおけるIDA, ADF, IMFの債務を100%帳消しにする。約550億ドル)を誰も責任を取らずに帳消しにすると、納税者である国民にどう説明すればいいのか困る。途上国政府、他の援助機関の失敗、天災などの外部要因もあったかもしれないが、世銀やIMFの責任も問われてもしょうがない。同じような過ちを二度と繰り返さないことが大事だ、というようなことをいったとたん、それまでざわついていたモニター室の中がシーンとなりました。条件をつけて、指導もして、ローンを貸した銀行が、ミス・マネジメントの結果、不良債権を帳消しにしてもらって、しかもその穴埋めのCompensationをやっと先進国に取り付けて、これで肩の荷が下りるぞというときに、そんなことをいうなよ、という感じでした。開発委員会の議長として最後を飾る南アフリカのTrevor Manuel蔵相の力量とナイジェリアのンゴシ女史の「ヨーロッパだって戦争やって間違いしたけど、戦後復興を支援してもらって立ち直ったじゃないの」という言葉でなんとかその場を収めることができました。これで、のど元過ぎれば熱さ忘れるのか、それとも世銀やIMFが変わって、間違いを繰り返さないよう正念場として捕らえるのか、さてどうする、という問いかけを誰かがやらなければという了解があったのかもしれません。最後に出すコミュニケの取りまとめもこのあたりでの苦労があったようです。
午後の記者会見にもでました。債務の帳消しについては、このところの原油価格の高騰で、そのメリットも帳消しになるという意見もでましたし、コンディショナリティーの見直し議論、IMFのDe Rato理事長からも今後ODAが大量に増えることを考えるとそれを消化し、結果を出せるかどうかが問われている、という見解もでました。債務の帳消しが、途上国の保健や教育など人々のためになり、MDGの達成にもつながるような結果を出せるのであればいいのですが。香港でのDohaラウンドの展開も注目していきたいと思います。詳しくは、世銀年次会合のサイトへ。
<http://www.worldbank.org/ambc/>
最後に、私は世銀前総裁のWolfensohnの開発へ一番の貢献は、世銀を人間開発に近づけたこと、貧困を世銀のミッションだと言い切ってMDGを掲げたこと、そしてそれをモンテレー・コンセンサスにもっていったことではないかと思います。世銀の関係者から、貧困削減をミッションにして「開発」銀行でいくのか、それともマクロ経済の安定をIMFとやっていく「貸し金業」に徹するのか、内部にもいろいろな立場の人がいる。トップキャリアを目指す人はローンの貸し出し量で勝負し、開発をやりたい人は思い切ってやれない不満と、はやりのテーマが変わっていく不安をもちつつ仕事をすると聞きました。私も世銀のいろいろな担当者と仕事や交渉をしてきましたが、話がつうかあの人と、銀行屋さんの人がいるなあと感じました。そう単純ではないのでしょうが、開発への影響力が強く、ユニークな強みを持つ世銀ですから、そのちぐはぐな部分を整理して、世界の問題の解決に貢献していってほしいと思います。
久木田

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