2005/10/03

平和構築:国連での議論

NY国連フォーラムの皆様、こんにちは。ユニセフ・シエラレオネ事務所に勤務しております根本と申します。

山内さん、平和構築を巡る議論の沿革と論点をまとめていただき、どうも有り難うございました。久木田さんのコメントにもありましたが、平和構築分野における国連の新たな取り組みについて、シエラレオネでの現状を簡単にご紹介させていただきます。(やや長文ですがご了承ください)

シエラレオネでは、1999年10月にUNAMSIL(United Nations Mission in Sierra
Leone)が設立され、10年にわたる内戦後のシエラレオネにおける平和維持を担ってきました。しかし、治安状況が改善したことなどを鑑み、PKOミッションが必要な段階は終了したとして、2005年末でUNAMSILの撤退が決定。今年6月には、国連安保理がUNAMSIL後も適切な統合的な国連のプレゼンスを確保するよう求めています。これを受け、フォロー・アップ・ミッションとしてのUNIOSIL(United Nations Integrated Mission in Sierra Leone)が設立されることが決まりました。山内さんがまとめてくださった通り、国連が平和構築の段階で、ミッションと各専門機関との「統合」というアプローチを試みるのは、シエラレオネが初めてのケースとなります。

それでは、UNIOSILとは一体どのような「統合事務所」となるのか、これまでのところ現場で把握できている範囲内で、その機構と機能の両面について簡単に触れたいと思います。

まず、UNIOSILの機構的な特徴として、平和構築を担う国連ミッションと国連各専門機関との組織的な統合が図られます。例えば、UNIOSILのトップ(Executive Representative of Secretary General)が、UNDP Resident RepresentativeとUN Resident Coordinatorを兼務し、シエラレオネで活動するすべての国連機関が1つの傘下に置かれることになります。このUNIOSILのトップには、現在のUNAMSILのDeputy Special Representative of Secretary General(既にシエラレオネのUNCountry Teamを統括)が、そのまま横滑りで就任予定です。

ただ、これは国連各専門機関が単純に融合し、突然1つの組織として活動を始めることを意味するのではなく、あくまでもUNIOSILという枠組みの下、それぞれがこれまでのように活動しつつ、まずはその調整機能をより一層強化することを目指していると言えます。一方、管理部門の一部については、そのプロセスや人員の統一・共通化が図られるという話もあります。例えば、現在、UNDPにいるField Security Coordinatorが、UNIOSIL Security Sectionのチーフとなり、シエラレオネにおける国連機関すべてのセキュリティの責任者となるようです。

次に、UNIOSILの機能はというと、UNAMSIL撤退後の国連各専門機関の活動の調整、ドナー・コミュニティとの協力、そして、平和の強化と長期的な開発のため、シエラレオネ政府を支援することにあるとされています。具体的には、UNIOSILは以下の5つの柱を持つ組織となる予定です―1) Peace Consolidation and Governance、2) Security、3) Human Rights and Rule of Law、4) Economic and SocialDevelopment、5) Public Information。特に、4) については、ユニセフを含むUN Country TeamとResident Coordinatorオフィスの活動をベースとして、その調整とサポートの役割を担うことになります。

このように、UNIOSILは、機構的にも機能的にも、これまでのPKOミッションとはかなり異なり、紛争後の平和維持から平和構築への移行という文脈で、長期的な開発までを視野に入れたユニークな性格を持つことになりそうです。

UNIOSIL設立に向けた準備の1つとして、昨年末にUNDP内にTransition Support Team(TST)が
作られ、UNAMSIL撤退後、その機能を国連各専門機関がスムースに引き継ぐことがきるよう、既に調整を始めています。例えば、UNAMSILにはPKOミッション内に初めてChild Protection
Advisorというポストが作られ、ミッション内部から子どもの保護を巡る政策面でのシエラレオネ政府のサポート、SRSGへのアドバイス等を担ってきましたが、こうした機能はユニセフが引き継ぐことになります。

ただ、現場レベルでは、UNIOSILが実際にどのように活動していくのか、まだ不透明な部分が大きいのが実情です。特に、4番目のマンデートであるEconomic and SocialDevelopmentについては、現在、国連各専門機関が担っている業務を、UNIOSIL内で誰が(これまでのPKOスタッフがそのまま引き継ぐのか?)どう「調整」し「サポート」するのか、当事者である我々もやや戸惑っているというのが正直なところです。

最後に、UNIOSIL設立に絡む背景として、1) Special Court for Sierra Leone(シエラレオネ特別法廷)の存在、及び、2)西アフリカの地域的安定の確保という、シエラレオネ特有の事情があることにも言及しておきます。中・長期的な平和構築という視点からは、これらの潜在的な不安定要因を抱える中、UNAMSIL撤退後も、シエラレオネにおいて国連が平和維持に関して何らかのプレゼンスを残さざるを得ないという側面があるのも事実です。本来であれば、PKOミッション撤退後、そのままTSTのような組織が指揮を執るかたちで、国連各専門機関が復興・開発への引き継ぎを行うというアプローチも考え有るかも知れません。しかし、シエラレオネの現状では、治安の確保について未だリスクが大きいと見られているようです。久木田さんが述べているように、長期的な開発、平和構築、治安は密接に関連している課題だと、強く認識させられます。

このように、まだまだ現場では手探りの状況ですが、こうした「統合事務所」を、平和構築に取り組む国連の将来のモデル・ケースとできるかどうか、2006年1月のUNIOSILの活動開始に向けて、平和構築委員会の設置の動きとともに、注視しているところです。

ユニセフ・シエラレオネ
根本

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