2005/10/07

Re: J. Sachs: National Strategy for Meeting the MDGs

吉田様、NY国連フォーラムの皆様

在バングラデシュ日本大使館の紀谷です。コロンビア大学のサックス教授の講義報告、ありがとうございます。楽しく拝読しております。

当地では、まさにMDGを目標に据えての貧困削減戦略を仕上げようとしているところで、今回のテーマ(National Strategy for Meeting the MDGs)そのものが動いているところです。

他方で、ご紹介いただいた「MDG Needs Assessments」のような発想や枠組みに基づいて、これまでの作業を全てご破算にして取り組むのかというと、それは結構非現実的というのが率直な印象です。
http://www.unmillenniumproject.org/policy/index.htm

方法論を書いたハンドブックはまだウェブに掲載されていないようですが、ポイントをまとめた上記冒頭ページの説明によれば、「MDG達成に必要な財政的・人的リソースとインフラを数量化し、透明性を確保した公共財政管理を通じてこれを達成する」とのこと。

そもそも、「MDG達成に必要な財政的・人的リソースとインフラ」とはいったい何なのでしょうか。経済成長には民間セクター開発が不可欠であり、これは、一定の財政資金と要員を投入すれば自動的に実現するといった代物では決してありません。(援助資金で全ての経済活動を永続的に支えるつもりなら別ですが・・・)

また、「透明性を確保した公共財政管理」は、どのように実現するのでしょうか。当地では、DFIDが4年かかって、ようやく財務省と4機能省をつないだ公共財政管理のパイロット枠組みが完成し、これから10省庁にスケールアップしようと苦労しているところです。相手政府の行政能力やリーダーシップ・コミットメントに多くの課題が残されている中で、援助資金を急増させ、かつ無理やり支出させるのは、オーナーシップを度外視した「新帝国主義」になって
しまいますし、持続可能性も期待できません。PRSPや援助効果向上パリ宣言であれほど強調されている「オーナーシップ」は、どうなってしまうのでしょうか。(先方政府予算をスルーすれば、全て「オーナーシップ」があることになってしまうのでしょうか・・・)

こんなナイーブな発想のものを各国に本気で適用しようと考えているの?これが途上国支援の理想像なの?というのが、現地で日々苦労している一実務者としての率直な感想です。バングラデシュでは、1億4千万人の将来がかかっており、これまで4年間かかって暫定貧困削減戦略文書(I-PRSP)を貧困削減文書(PRSP)へとようやくブラッシュアップしてきたところです。そのような試行錯誤の成果と、この「MDG Needs Assessments」なる新たな「一般論」の
ツールの双方を前にして、責任ある途上国政府やドナーの実務者は、どちらを信用するのでしょうか。

Millennium Projectは、どちらかといえば、先進国向けのアドボカシーを主たる目標として、わかりやすく論理構成をしていますが、実際に途上国に適用しようとすると、途端にその有効性に「?」がつくような印象があります。本気で適用される途上国の側は、たまったものではありません。(エサとして、リソースがふんだんについてくるなら別ですが。それでも、これが持続可能な開発につながるの?という不安は残ります・・・)

現実的な道は、若干時間がかかっても、途上国政府の指導層や市民社会と対話しながら、途上国側が納得し、確信できる政策を、自ら実行させていくことだと思います。これは、目を見張るような特効薬ではありません。しかし、良心的な提言を行うためには、このような途上国での現実を十分に踏まえる必要があると思います。

また、MDGを議論する場合には、「カンフル剤」のようなナイーブな立論を乗り越えて、真に持続可能な成長につながる方策が必要という視点を打ち出すことが、大事ではないでしょうか。単に、「Millennium Projectの立論には欠陥がある」と叫んでも、支持は得られないと思います。MDG達成に向けての具体的方法論として、「人間の安全保障」が有効、「能力開発」が有効、「南南協力」がオーナーシップ強化に有益、などと建設的な付加価値を提示していけれ
ば良いと思います。

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