2004/11/30

国連改革High Level Panel報告書

皆さんこんにちは
 アナン・タイ元首相を議長とする国連改革に関するハイレベルパネルの報告書が公表されてしまったようです(予定より2日早い)。これは、焦点となっている安保理改革以外にもいろいろと面白い論点を含んでいると思います。
 これについての皆さんの意見、議論をお伺いしたいと思います。

外務省国際社会協力部政策課長 南  博

2004/11/28

事務総長への不信任決議?:メディアの 反応

皆さん、ユニセフの久木田です。

先週、一部の外国メディアの報告を受けて、日本のメディアからも「国連事務総長への職員組合の不信任決議」についての報道がありました。これは国連本部の職員組合の50近くあるユニットの一部が職員組合の決議案として提出したものが、早とちりか故意か、報道されたもののようです。私も事務総長の名の下に任命された職員の一人として、驚くと同時に展開を注意深く見守っていました。

実際には、国連本部にあるOIOS(内部監査サービス事務所)所長のNair氏の人事問題などの疑惑について、Catherin Bertini(管理部門のUSG)が行った調査の結果をもとに、事務総長がこの件を不問に付したことに対して、職員組合が強い懸念を示したというものです。これ以外にも、今年に入ってUNHCRのルベルス氏のセクハラ問題やバグダッドの爆破事件に関するフレシェット国連副事務総長の去就問題についても、これらシニア・マネジメントの責任を問わなかったことが背景にあり、国連事務総長を支える人々のインテグリティーと説明責任を高める必要性を職員組合が強く求めたものでした。

コフィ・アナン事務総長への支持の声は、ジュネーブの職員組合からもニューヨーク本部の職員組合からも高く、私の知る限りでも、彼に対する信任は国連職員の中では強いと思っていましたから、不信任決議の報道があって驚きました。

職員組合のプレス・リリースや国連報道官による説明などを見た後、いろいろなメディアの報道をみましたが、CBS Newsのサイトの解説は比較的バランスがよく、そう扇動的ではありません。http://www.cbsnews.com/stories/2004
/11/17/world/main656118.shtml

一方、右派のFox Newsはここぞとばかり書いているように見えますし、不信任決議が通ったような書き方をしています。http://www.foxnews.com/story/0,2933,139109,00.html

国連についてのメディアの報道は、今回のように早とちりや誤報道があるとその反応が大変面白いと思いました。正しく伝えることの難しさも感じます。

久木田

2004/11/19

12/26-29・模擬国連会議全日本大会につ いて

NY国連フォーラムの皆様

在バングラデシュ日本大使館の紀谷です。人間の安全保障については議論が続いていますが、当方、引き続き現地での実践に取り組んでいきたいと思っております。

別件ですが、本年12月26日から29日まで、東京・池袋のホテルメトロポリタンで、模擬国連会議全日本大会が開催される予定です。現在、参加者の第2次募集中で(11月3日から12月1日まで)、総会の第1委員会と第3委員会に残席がある由です。

この大会のためのウェブサイトを見ましたが、本当にプロっぽいつくりで、感動ものです。是非ご覧ください!(これが最近の学生のサークル活動なのでしょうか・・・)
http://www.ajmun.org/04/top.html

模擬国連関連のリンクはこちらです。
http://www.ajmun.org/04/link.html

私自身、模擬国連のOBで、大学3年になる1985年の春に、初めての海外ということで、NYの全米模擬国連大会に参加しました。NYの国連本部での開会式に出席し、42nd StreetにあるGrand Hyatt Hotelでの会議(UNCTADの技術移転委員会担当)でアメリカ人と初めて英語で議論するなど、大変良い経験をすることができました。

その後、国連関係の仕事をしたくて外務省に入りました。最初の実務研修期間を除いて国連を直接担当する機会はなかなか巡ってこなかったものの、入省後10年を過ぎて、初めてUNCTADの投資関連のジュネーブでの会議に出席し、会議外交の難しさと可能性を改めて感じました。今は、当地(バングラデシュ)で、UNICEF、UNDP、WFPなどの国連機関と一緒に日々仕事をしており、本部とはまた違った国連の側面を見ております。

NY国連フォーラムのアウトリーチのひとつとして、模擬国連のような学生のサークル活動と連携することができれば、大変面白いのではないかと思いますが、如何でしょうか。インターネットで、世の中はどんどん狭くなっていきますね!

今後ともよろしくお願い致します。

在バングラデシュ日本大使館 紀谷昌彦

2004/11/18

人間の安全保障ユニットとOCHA

田瀬さん、NY国連フォーラムの皆さんへ

丁寧な解説有難うございました。

話は少しずれますが、国連人間の安全保障ユニットをOCHAに入れた背景はどのようなものなのでしょうか。OCHAに入れてしまったことで何か人間の安全保障自体が人道支援を扱うのみの概念、或いはプログラムとみなされてしまうのではないかと考えたりもします。

紀谷さんのActionAidの言及に便乗して言えば、いっそうのこと人間の安全保障基金をNGOとして立ち上げても良かったのではないでしょうか。Global Fundのように国際機関としてしまうというのは少し行き過ぎでしょうか。

差しさわりの無い範囲で教えていただけましたら幸いです。

早川

2004/11/17

人間の安全保障:途上国現地での具体化

皆さんこんにちは

 外務省で人間の安全保障ほかを担当している南と申します。先週NYに出張した際このフォーラムのことを聞き、早速加入させていただき、今回初めて投稿させて頂きます。
 外務省や国内での人間の安全保障の普及、ということが私の使命の一つなのですが、ここで悩むのが、「結局人間の安全保障、というテーマによって何がどう変わるのか」という質問に対して私が十分な回答を持ち合わせていない、ということです。わかりやすく言い換えれば、「人間の安全保障というお題目を唱えることによって、世の中がどのように良くなるのか」ということです。日本人はきわめてプラクティカルな人間ですから、やはり具体的な成果がないと納得しないのだと思います。
 人間の安全保障を実現するためのツールの一つとして国連事務局にある人間の安全保障基金というものがありますが、1件100万ドル程度の案件によって世の中が大幅に変わるわけではないでしょう。結局、この基金を使うにせよ、バイの援助、マルチの援助を使うにせよ、コミュニティ作り、村おこし、ということを考えながら援助プログラムを作り、かつその住民のオーナーシップを発揮させながら生活の向上、強化を図っていく、ということなのであると思っています。
 しかし、この実行は簡単ではありません。まずもってプログラム作りに手間がかかるし、現場でのレシピアント側の主体的な協力が十分に得られなければなりません。そもそも国連関係援助機関同士の援助調整も十分になされているとは限らないでしょう。
 このように書いている私ですら、現場のことをよく知っているわけではないので、確信を持てないでいるわけです。緒方JICA理事長によれば、「人間の安全保障とは、グローバルに考え、ローカルに行動すること」ということですが、私の場合はそのローカルな行動をいかにすべきかがわからない、ということです。

 そこで、バングラデシュの紀谷さんにお聞きしたいのですが、バングラデシュではどのようにしたら、人間の安全保障のコンセプトを具体化できるのでしょうか。人間の安全保障の一つの焦点は、ポストコンフリクト状況下でのギャップへの対応、ということなのですが、バングラデシュの場合ポストコンフリクトではないので、通常の貧困状況への対応、ということになるかと思います。一つ考えられるのは、洪水など災害の多いバングラデシュの状況に対応する、災害に強いコミュニティ作りをする、ということが考えられるかと思うのですが、このような援助は既に行われているのではないかとも想像します。どのようなアイディアがありうるのか、是非教えて頂きたいと思います。

外務省国際社会協力部政策課長 南  博

2004/11/16

International Year of Microcredit 2005

国連フォーラムの皆様、

こんにちは、
国連代表部で在外公館派遣員をしております荒川麻衣子と申します。ご覧になられていた方も多くいらっしゃるかと思いますが、昨晩、BBCニュースで「国際小口金融年(2005年)」に向けた、マイクロクレジット/ファイナンスの特集が放送されていました。10分くらいの短い特集でしたが、マイクロクレジット/ファイナンスの説明から始まり、グラミン銀行創設者のMuhammad Yunus氏のインタビューや、実際にモンゴルやブルキナファソなどで運営されているマイクロクレジット/ファイナンスの様子など、要点がとてもわかりやすく映像に収められていました。
   
国連は来年を「国際小口金融年」と指定していますが、18日(木)に正式な立ち上げ式がニューヨークの国連本部で行われる予定になっているようです。

国際小口金融年特設ウェブサイト:www.yearofmicrocredit.org
国連広報センター関連ページ:http://www.unic.or.jp/schedule/futur.htm

まだ私も全てに目を通しきれていないのですが、特設サイトは内容がとても充実しています。なお、式典当日はその模様が全世界にウェブ中継(!)されるそうです。

UN Webcast: www.un.org/webcast/index.asp
(UNTVのウェブ版です。24時間ずっと国連に関する映像が流れています。各国の一般討論演説やプレス会見などの映像も見ることができます。)

荒川麻衣子

フィールドについて

初めて投稿致します。ピッツバーグ大学大学院で開発学を学んでおります、福元良江と申します。

2.フィールドについて

話が飛んでしまって大変申し訳ございませんが、私は一番最初のメールで久木田様がおっしゃっていた「・・・国連の仕事は世界中で行われています。国連の本当の姿を知ってもらうには現場から彼ら彼女らの生々しい報告も重要だと思います。・・・」という点に深く同意致しており、JPOの先輩、またJPOの先輩と限らずとも、大使館の方やNGO・バイ援助機関の方等、フィールドで現在働いていらっしゃる方々のお話も伺えたら個人的に大変嬉しく存じます。

私自身フィールド経験は、インターンをさせて頂きましたバングラデッシュ(ユニセフ)のごく短い期間だけで、まさに「フィールドを少しだけ、大変有り難くも見聞させて頂きました」というレベルで誠に恐縮ですが、ダッカで幸運にも出会えた尊敬するJPOの先輩達や大変お世話になりました大使館の方々の仕事振りや生活を間近で見させて頂いて、とても学ばせて頂きました。フィールドでは、普通に停電が1日に4回・5回と起きたり、そのたびにPCが切断され画面が真っ暗になって、作成していた文書が消えてしまったり、ネット環境も悪くインターネットの接続にアメリカやイギリスや日本では考えられないくらい時間がかかるか、すぐにメールチェック等が運良くできても、日本語のメールは読めない等、デジタルデバイドではございませんが、現代社会の重要な情報源であるインターネットひとつ取っても、いろいろと大変なのだということを感じました。なのでメールを投稿することすら、時間がかかってしまうことであったり環境によってはネット接続も難しいのかもしれないのですが、できましたらフィールドのさまざまなお話を聞かせて頂けましたら大変有り難く嬉しく存じます。私自身、現在は先進国におりますがダッカが地理上だけでなく気持ちの上でも遠くならないようにと思いながら、大学院で開発学の勉強をしております。

MLでさまざまなご意見を拝読させて頂くのは、大変有り難くいつも勉強させて頂いております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

ピッツバーグ大学大学院
福元良江

2004/11/15

universality of human rights vs. cultural relativism の問題

皆さんこんにちは
国連フォーラム発起人の一人である川守久栄です。
平日は久木田さんの下(UNICEF, Program Funding Office)でインターンをし、週末は国連本部でツアーガイドをしております。フォーラムの設立以来、皆さんの意見を拝読し、いつか自分も投稿しようと思いつつも仕事や雑務に追われるなどして、結局今日に至ってしまい申し訳ないしだいです。
国連のツアーガイドを始めてからもう8ヶ月くらいが過ぎました。ツアーガイドは皆、初めの2週間みっちりと国連の集中講義を受け、その後は週に4,5回、一日3-5回のペースでツアーを行います。ツアーを行う対象としては、一般の方、NGO関係者、学生、教育/宗教団体など様々です。私は日本語と英語でツアーを行っていますが英語ですることのほうが多いです。日本人の方は団体で来るというよりも、個人でツアーに参加される方のほうが多いようなので日本語ツアーの需要は余りありません。国連のツアーに参加される方はアメリカ人が最も多いとはいえ、かなりインターナショナルで刺激になります。
ツアーでは安全保障理事会、信託統治理事会、経済社会理事会、総会を回るのですが、その間にツアー参加者から様々な質問をされます。通常は私の知識内で答えられるものが多いのですが、この間ドキッとさせられる質問がありましたので皆さんの意見を伺いたいと思いました。
私は経済社会理事会の前で以下の女子教育の話をいたしました。
" One of the issues the Economic and Social Council has been dealing with is Girls’ education. Education is a fundamental right for all children, including girls. However, quality education remains a distant dream for millions of children in the world. The statistics say that 121 million children in the world are not in school and 65 of those children are girls. In Sub Saharan Africa, 24 million girls were out of school in 2002 and 83% of those girls who are out of school live in Sub Saharan Africa, South Asia, East Asia and the Pacific. Two-thirds of the world’s 875 million illiterate adults are women.

To fight this problem, UNICEF, one of the UN programmes under the Economic and Social Council, has put Girl’s education among its priorities for the medium-term strategic plan for 2002-2005. The focus is on getting girls into school, making sure they stay there and equipping them with the skills they need to succeed in life. UNICEF is now working in 158 countries in the world, calling on development agencies, government, families, religious group, civil society and donors to step up efforts on behalf of education for all children."

その後、ツアー参加者の一人から「女子教育は大切と入っても、いくつかの国々では女子が学校に行かないのは文化となっているのだから、国連はそのような国に対してどのように対応しているのか?政府側と国連と文化の面で対立が起こった場合は国連はするのか?」と聞かれました。

私はその質問に対し、「国連は国々の文化の違いを尊重し対立を回避しつつ、国連の方針を貫こうとしている」という一般的な答えを出し、またアフリカの国ではクッキングオイルが高価であるために、クッキングオイルを提供する代わりに女子を学校に行かせるというユニセフのプログラムを例に出しました。

これはまさにuniversality of human rights vs. cultural relativismの問題だと思うのですが、もっと具体的に答えられなかったことを残念に思っています。もし皆さんがこの質問に対して見解・具体的な事例をお持ちでしたら、是非お聞きしたいと思います。

それではまた
川守久栄

国連の今を知る情報源

NY国連フォーラムの皆さん、ユニセフの久木田です。
国連で今何が起きているのかを知るためのおすすめの情報源をいくつか紹介したいと思います。日本やアメリカの通常のメディア、さらにはCNNやBBCの国際版などのメディアから流れてくる情報でも、国連についての情報は他のニュースとのバランスを考えて流されますので、かなり内容が限られています。国連の日々の動きやこれからの日程などを知りたいときにどのような情報源があるのでしょうか。探せばいろいろとあるのでしょうが、今日は私の日頃使っているものを紹介したいと思います。皆さんもおすすめのものがあれば、紹介してください。
まず最初のおすすめは、国連そのものが出しているもので、入り口はもちろん国連のホーム・ページです。<http://www.un.org/> その中でもニュース形式で読みやすいのはUN News Centerです。 <http://www.un.org/News/> 国連関連の情報の中心的サイトです。E-mail news alertに登録すれば、メールで配信されるので、私は時間があるときにPDA一体型の携帯電話で見ることにしています。新聞形式で読みたい方は、UN Daily NewsのPdfファイルをダウンロードすれば印刷できます。
UN News Centerでのおすすめは、国連スポークス・パーソンのNoon Briefingです。<http://www.un.org/News/ossg/hilites.shtml> これは、国連の動きをまとめて国連のスポークスマンが主に国連担当のメディアを対象に説明するもので、これをニュース・ソースにして各国に配信されることも多いのではないでしょうか。ちなみに、11月11日分にはアラファト氏の葬儀、象牙海岸での紛争、2005年度国連人道支援統合アピールなどが話題になっています。その他、外部の人には少しオタク的な情報になりますが、国連での会議の日程や内容を知らせるJournalなどもあります。<http://www.un.org/Docs/journal/En/lateste.pdf> 日本語のサイトは東京の国連広報センターのサイトがよくアップデートされていて便利です。<http://www.unic.or.jp/index.htm>
国連以外からの情報源ではUN Foundationの出している、「UN Wire」があります。これは、国連と世界の動きを専門に紹介するWeb-basedのメディアで、国連ニュース、子どもの健康、女性と人口、エネルギーと環境、平和・安全保障・人権などのテーマで主要なニュースを紹介しています。UN Foundationは国連の活動を支援するためにできたNGOで、CNNをつくったTed Turnerが10億ドルを出して設立した団体です。したがって、それなりのバイアスがかかっていますが、幅広いニュース・ソースと国連内部からの情報もバランスよく配され、外から見た国連の情報源として重宝しています。<http://www.smartbrief.com/un_wire/> このリンクから登録すると見ることができます。
最後に余談ですが、国連のところどころで見かける、独立ミニコミ紙のような新聞 UNDIPLOMATIC TIMESをご存知でしょうか?見つけたときに拾い読みするのですが、まじめな記事や他愛のない記事、時にはそんなこともあるのかという半信半疑の記事まで載っていています。これは国連に出入りしていないと手に入らないかと思いきや、年間購読の申し込みもできるようです。購読している人はいるのでしょうか。
ジュネーブの早川さん、そちらはどうですか?
久木田

人間の安全保障と人権

小西さん、早川さん、久木田さんほか国連フォーラムのみなさま。国連人間の安全保障ユニットの田瀬です。
11月8日月曜日に緒方貞子議長の下で「人間の安全保障諮問委員会」が開催されたため、その準備とフォローアップにかかりきりでこれまで投稿する余裕がありませんでした。すみません。せっかく人間の安全保障が話題になっているので投稿してみます。以下、まったく私の私見ではありますが、「人間の安全保障委員会」の経験から、なるべく簡単に、誤解をおそれず「人間の安全保障」と「人権」、それから「人間開発」の違いについて書いてみます。3分で読めない量になってしまったらごめんなさい。ご議論お願いします。
●「人間の安全保障」は言ってみれば方法論。
人権は個々人が人間である限り生まれついて持っている、その存在に内在する「特質」のようなものと理解しています。国連の文脈では国家があってはじめて人権があるといった議論が多いような気がしますが、もともと人権概念は、国家があろうがなかろうが、人間である限りはあるんだという前提に立っていますよね。
「人間の安全保障」が人間に内在する「特質」であるという人はいないでしょう。そもそも「保障」はサ変動名詞ですし、実際これは「安全を保障するためのアプローチ」であってそれ以外の何者でもありません。以前、代表部の北岡大使とお話ししているときに、大使が「それってデマンドサイドの安全保障ってことかな」と仰ったことがあるのですが、本質を見抜いた観察だと思いました。
人間開発もその意味ではアプローチの一つといえるでしょうね。ただ、センの言うように、人間開発は非常に上向き(upbeat)な概念で、人間の可能性をフルにひき出すことをめざしています。一方、人間の安全保障は急速な状況の悪化(sudden downturn)が起きたときに、どうやって社会を持たせていくかという側面に注目した方法論かと思います。
●「人間の安全保障」の対象は個人よりももう少し大きな単位
そういうわけですから、人権は基本的には個々人をベースにした概念かと理解しています。最近では「発展の権利」など集団的な権利も認められてきていますが(日本政府は反対)、やはり出発点を考えると、人権は一人ひとりの人間に内在するものだと思います。
人間の安全保障の方でも、日本政府は2000年頃までは「一人ひとりの視点からみた安全保障」というような言い方をしていた時期があり、このころは人権との概念との混乱がありました。しかし、緒方議長の下で人間の安全保障委員会の審議が進むにつれ、こちらのほうはもう少し大きな単位、すなわち「人々(people)」を対象にした方法論なのではないかということになってきました。特に、委員会はコミュニティの能力が人間の安全に及ぼす影響に注目したといえます。最終報告書では明確に「コミュニティレベルの保護と能力強化」というアプローチを打ち出しています。人間開発はどうなのでしょうか。専門家の方いらっしゃいますか?
●「人間の安全保障」のキーワードは相互連関(inter-linkage)
人権の世界では、生存権、参政権、財産権、表現の自由など、人間が持つ権利の特質をその場合場合に分けて考えますよね。そしてそれぞれが法規範になっているわけです。これらの権利の間の相互連関とか、すべての権利を統合して実現するとかという言い方はあんまりしないと思います。
一方、人間の安全保障の方はまさにそれがテーマです。人間の周りにはいろんな問題がありますが、実はそれらがたがいに結びついていて、結果的に人々の安全を左右していると考えるわけです。水、保健、教育、食糧などの条件は互いに密接に影響を及ぼしますし、紛争後の開発への着手の難しさとか、貧困と紛争の間の因果関係といったことがこのアプローチの主題です。「恐怖からの自由」と「欠乏からの自由」の両方を実現する、という言い方は、ここにつながるものと認識しています。
相互連関自体は人間開発においても相当程度勘案されていると思います。ただ、人間開発では「恐怖からの自由」にはあまり焦点を当てて来ていないと理解しているのですが、このあたり、よく知っている方いらっしゃいますか。
●「人間の安全保障」は国際機構論、組織論ともなり得る
実のところ、「人権」や「人間開発」と「人間の安全保障」の決定的な違いはこれだと思います。人間の安全保障は、人々の周りの問題が結びついているという理解から、ひるがえって国際社会の方を向き、そのあり方もこれらの問題を結びつけて考え、行動できるようなものでなければならないという問題意識を提起します。つまり、人間の安全保障は、人間を中心とした考え方ではあるのですが、その最終目的は国際社会のあり方を変えていこうという組織論、国際機構論でもあるのです。人権や人間開発は、それ自体は組織論ではありませんよね。
これは、特に緒方議長が難民高等弁務官時代に、難民条約で定められているUNHCRのマンデートの中で、IDPなど難民以外の人を救うのが非常に難しかったという経験をされたことから来ている部分が大きいと思います。また、いわゆるギャップの問題(紛争から開発への以降が円滑に行なわれない)も、緒方議長が経験された大きな試練であったと思います。セン議長の議論はあくまでも、どこまで行っても人間の議論なのですが、緒方議長はいつのまにか人間を守る側の国際社会と対峙している、という感じでした。この二つの知性が融合したことに、委員会の議論の面白さがありました。
現在の「国連人間の安全保障基金」のガイドラインでは、こうした考え方を受けて、「複数機関が複数セクターをその相互連関を含めて扱う統合アプローチ」というのが事業採択の一つの基準となっています。これは言ってみれば、資金の使い方に要件を課すことで、国際機関の振る舞いを変え、その活動をより一貫したものとしようという試みです。これと「人権アプローチ」を比べれば、その意味するところの違いは非常に明確だと思いますが、いかがでしょうか。
本日はこの辺にいたします。長文失礼いたしました。

2004/11/09

human security& right-based approach

Hajimemashite. I am yoko konishi, working for UNDP cambodia as a JPO. I am on programme policy operations training in NY right now (so I cannot type in Japanese). The training itself is intersting, esp. to know about result-based management and various practice areas we are working.
There was a topic on human rights& right-based approach during the training course, and I got a bit confused because the characteristics of the right-based approach to development was explained to cover peace, development, and human rights- similar to my understaning of "human security". The Resource person explained human security situated in conflict situation, but I assume that there is on-going academic debate and some discussion esp. in Japan to broaden the concept of human security. So could anybody elaborate the difference and definition of both concepts? And how the human security is positioned in the UN system?
Moreover, as I am working in Cambodia and some people say that the sound of 'right-based approach' does not match the country context or does not work well (because of the way it is perceived, I think), could you give me a good example of the strategy how it can be brought into the country esp. in Asia?

Thanks,

Yoko Konishi
UNDP Cambodia

2004/11/01

アマルティア・セン講演:正義 、グローバリゼーション、MDG

皆さん、ユニセフ・ニューヨーク本部の久木田です。

ニューヨーク国連フォーラムへの最初の投稿をさせていただきます。国連の今の動きを伝え、何が中心的な議論なのかを紹介しようという本フォーラムの一環として、今回は実況中継風にアマルティア・センの講演についてお知らせします。

昨日10月29日、国連総会第二委員会の基調講演として、「グローバリゼーションの中でミレニアム開発目標達成への集結を推し進める:原題 Forging coherence to achieve the Millennium Development Goals in the context of globalization」と題して現在ハーバード大学ラモント大学教授でノーベル経済学賞受賞のアマルティア・センの講義がありました。

この講演の知らせを受けたのは10月25日。いつものようにユニセフの国連関係調整部から、国連の中の主な行事を知らせるUN Journalの中から抜き出して知らせてきたものでした。国連各国代表部、国連職員、NGO代表者、メディア関係者を対象として招待が出されています。日程表に早速入れておきました。

10時ちょっと前に国連総会場の地下にある第4会議室に入り、傍聴席にすわりました。すでに半分くらいは席がうまっていましたが、10時10分くらいには前方の議長席のとなりにセン教授がたちました。すると、すかさず南アジアの某氏がさっと演台にかけあがってセン教授と握手をします。さすが某氏、ぬけめない元外交官の本領を発揮していると、私のまわりの数人が小声で話しています。セン教授と議長、もう一人の講演者Financial Timesのマーチン・ウォルフが着席して会が始まります。その頃には、傍聴席は満席、中央の各国代表部席もほぼ埋まりました。後部には立ち見もいます。

議長の挨拶が始まりました。声が小さい。それにスペイン語です。傍聴席についている同時通訳のイヤフォンをつけて、チャンネルを英語の1にして、ボリュームをあげます。聞こえない。紹介されたセン教授が話を始めました。比較的わかりやすいイギリスなまりの英語ですが、語尾がはっきり聞こえない。隣の若い女性も聞こえないと合図しています。セン教授は「今日の私の本当の題目は、、、」といっています。私はあきらめて、傍聴席前の北朝鮮の代表部席あたりが開いているのを幸いに、お付の席に移動してイヤフォンをとりました。少しは聞こえる。

教授は、Justiceの話を始めました。いつも深遠で本質を見据えた発言ですが、今日は正義と公正の話で切り出しました。グローバリゼーションが進み相互依存性が高まった今日の世界で、正義が行われていること、それが運命のようにそして疑いなく(manifestly and undoubtedly)行われていることが重要であると言っています。正確には正義が行われているように見えなければならない、Justice is seen to be doneというような表現を使っています。そして正義の定義として、John Rawlsの「正義論」からの引用をしています。(実は偶然、18年前までやっていた私の博士課程の研究テーマ領域の話になったので、心理学専攻で経済学者ではない私もなんだかいつもより教授の話がよくわかります。ジョン・ロールズを知らない人は教授のなまりで、ジョン・ローズと聞こえたはずです。)

次に、教授は果たしてその正義が今行われているかのアセスメントを始めました。全体として今日の世界はグローバリゼーションの恩恵を受けている。アンチ・グローバリゼーションの批評家たちの議論とは反対に、オープンな社会、経済的自由、技術の進歩、政治的な進展などによって、それは多くの恩恵をもたらしている。もちろん、それらの恩恵の公正な分配(実はこれが私の研究テーマ)が行われているとはいえないが、それはグローバリゼーションがそうしているというよりは、国内(domestic)の経済的、社会的政策の責任がもっとも大きい。教育や保健、疫学的対処、マイクロ・クレジットなど人々が活動しやすくなるような政策的なアレンジメントをどう選択するかが大切だ。それをいかにより公正なものにしていけるかが問題だ。

同様に、グローバルな市場経済化そのものは、非常に生産的で、市場経済の力を使うということは悪いことではない。ただ、その使い方にもいろいろなアレンジメントがある。どのようなマーケット・ソルーションを出していくのか、そこに公正を確保する道がある。ひとつ気をつけないといけないのは、情報の分配での不公正が世界にはあるということだ。

もちろん、統治の問題もあるが、世界の一番の不安定要因は、武器の取引である。10年以上も前にマーバブル・ハク(人間開発報告の著者)が言っていたように、G8だけで世界の武器取引の80%以上を行っている。世界の大国がこの点で大きな責任を持っている。これをなんとかする必要がある。世界で取引される大量の小火器をなんとかするべきだ。

そして、最後に世界はもっと民主的で参加型のアレンジメントを選択するべきだ。そのもっともよいコンセンサスは、2000年の国連ミレニアム宣言に集約されている。MDGミレニアム開発目標がより注目されているが、ミレニアム宣言そのものを見る必要がある。

大きな拍手で15分ほどの講演は終わりました。私の理解に限界があり、ノートをとる際にバイアスもあるので、偏っていると思います。教授の講演議事録がでたら、フォーラムのBlogにリンクを張る事にします。

この講演の例でもわかるように、国連は様々な人々の意見を聞く場を設け、世界のコンセンサスをつくり出そうと懸命です。この二週間ほどの間に、ミレニアム・プロジェクトのジェフリー・サックスの話や、プロジェクトの内容をNGOに紹介するお昼の会議など、MDGだけをとってもたくさんの会議がありました。もちろんすべてには招待されませんし、招待されても自分の仕事をほってそれに出ることはできません。よって毎回報告ができるわけではありませんが、この豊かで重要な情報をもっと多くの人々にしってもらいたい、そして国連のコンセンサス作りに参加してほしいと思います。フォーラムのネットワークを広げ、もっといろいろな人の報告が出るようになるといいなと思います。

もうひとつ。このような概念的な議論を真剣に行う一方で、国連の仕事は世界中で行われています。先月ガーナとシエラレオネに出張して、マラリア予防の蚊帳を使っている家庭を訪問したり、足首から1メートルも長い寄生虫ギニア虫が出ているのを見たり、長い内戦のなかで誘拐され兵士や性的奴隷にさせられた少女の社会復帰の訓練を見たりしました。国連軍のヘリの中で任務を終え帰国する兵士と一緒になったりもしました。また、それぞれ国のユニセフ事務所には日本人のJPOがいて、日々それらの問題と向き合っていました。国連の本当の姿を知ってもらうには現場から彼ら彼女らの生々しい報告も重要だと思います。その点でもフォーラムのネットワークを広げていきたいと思っています。

皆さんのご意見、ご感想をお待ちします。

久木田純


Click Here